世界の記述

タイトルはマルコポーロより。旅行を主とした日本と世界に関するブログです。たまに政治・経済もあり。

No.246:終戦70周年と不透明な戦争の原因


Steven F. Udvar-Hazy Center: View over World War Two aviation wing, including Japanese planes and B-29 Enola Gay

Chris Devers

 

こんにちは。先週の8月15日は終戦記念日で今年は節目の戦後70年でした。いつにもまして、戦争に関する記事を見たような気がします。また、韓国は日本から解放された日であったり、イギリスでは勝利が祝われたりと諸外国でも様々な行事が開かれていたと思います。

 

ドイツに住んだことがないから本当か知りませんが、ドイツは日本とは違い、全て過去の政権が誤ってやったこというスタンスでいるとよく聞きます。確かに、日本ではどちらかというと日本人の被害に関しても取り上げられていることが多いとは思います。そもそも、あの戦争は何だったのかという所を今日は書いていきます。

 

あの戦争の原因は日本やドイツという枢軸国の侵略というのがストーリーですが、それは勝利の論理である側面もあります。確かにドイツや日本は残虐なエピソードを残してしまったし、負けた国は「悪」になり、勝った国は残虐なことをしても「正義」となるのが戦争の決まりでもあるので敗戦国としては口は出せません。また、そんなに日本を配慮してくれる程、多くの人は深く考えていません。

 

しかし、そんな単純な考えでは思考停止になって戦争の教訓は絶対に得られないと気もします。「戦争は悲惨です、平和と愛する心が長く続けば良いと思います。」と言っている、テレビでよく流れる小学生と同じレベルになってしまいます。いくら綺麗事を言っても、実際に今もナイジェリアやイラクで毎週テロが起きていて解決できていないことが物語っています。

 

あの戦争の原因を考えると、世界恐慌ブロック経済の影響が大きく、ブロック経済圏が乏しく自給自足を強いられた日本やドイツが、ブロック経済圏を持つアメリカ、イギリス、フランスに対して出した禁じ手が戦争だったという所だと思います。(ソ連に関してはあまり原因はわかりません・・)

 

第二次世界大戦が起こる前、第一次大戦で敗れたドイツは多額な賠償金をイギリスやフランスに支払わうことになっていました。第一次大戦でヨーロッパは荒廃していたため、世界の経済の中心となっていたアメリカはこの戦争中に戦勝国のイギリスやフランスにお金を貸していました。

 

この借金(戦債)を返してもらうためにもドイツの復興は必要であり、アメリカはドイツへ資本を導入していました。しかし、このアメリカが世界恐慌によりブロック経済を強めると、ドイツはさらに厳しい状況に立ちファシズム政党などが立ち上がり植民地獲得に急ぎます。

 

そんな大まかな流れだと思いますが、ドイツは明確な流れは理解しやすい気がします。しかし、日本は原因がとても複雑な気がしています。これが、多くの日本人が先の大戦を「敗戦」と捉えず「終戦」と捉える(加害者と言うよりも被害者の側面を感じる)要因なのかもしれないなと考えました。また、この観点が外交でも突っ込まれています。僕の知識不足だけかもしれませんが、当時の日本の明確なビジョンが見えてこないからです。

 

日本は日露戦争に勝利してから満州への投資も活発になり、第一次世界大戦も勝利して利益を獲得し、アメリカは警戒し出します。ただ、世界恐慌が起こった後は満州への権益を拡大させたい一方で、日本の中国進出や軍拡などに対して干渉していたアメリカやイギリスと意見が対立していたので、軍部の苛立ちはかなりあったと思います。また、「満蒙は日本の生命線」と言うフレーズもあったように、本土の日本人が暮らすにも満州開拓は必要だったと思います。

 

そんな中で盧溝橋事件が起こり日中戦争が始まりますが、日本軍は満州以外に進行した中国の土地を返還するとして和平を試みたことも一時的にあったようなのです(船津和平工作)。日本に敵対するいわゆる「中国」側には主に国民党軍や共産党軍がいますが、国民党の蒋介石をアメリカやイギリスなどが援助する「援蒋ルート」などがあったので、その遮断のためにも戦っていました。(軍事産業に投資した資産家や、南京が陥落するとお祭りムードになったりと世論が拍車を欠けた面もあったと思います。)

 

中国側としても、国民党と共産党で分かれていたので当初はどの勢力が本当の敵とするかが見定まっていなかったと思いますし、日本としても対中関係に干渉していたアメリカやイギリスなどがいて中国情勢が複雑化する一方で、目の前の敵とは戦わないといけず、本音の所で誰と戦っているのかが難しい局面であったのではないかと思います。そして、最終的には直接アメリカやイギリスに1941年に宣戦布告して攻撃することになります。

 

こうしてアメリカと開戦してミッドウェー海戦後に戦局が悪くなると、神風特攻隊の攻撃や本土空襲や原爆など、悲惨な歴史が日本史に刻まれることになります。そして、僕たちは先人達を思い、毎年この時期になると悲しい気持ちになります。

 

戦勝国の人からすれば、例えば日中戦争は日本の侵略行為と言うのはわかりますが、日本人の心情としてはその一言で片づけるのは中々難しい所があると思います。それは、まず、なぜ日中戦争はあそこまで計画性がなく泥沼化したのかが難しいからです。この点がとてもあの戦争の捉え方でナイーブな所であり、何か今後のヒントになるのではないかなと個人的には思うのでした。

 

例えば、ナチスのような明確な指導者がいて進んでいった戦いだったら、陸軍と海軍でバラバラに戦ったりと泥沼化せず、前政権を完全に否定できて日本もドイツのような立場になっていたのかもしれないなと思うのでした。あの時の日本はあの指導者がいけなかったからだ!という具合に。韓国も日本に統治されていなかったら同じ枢軸国になってしまう可能性があった訳で、日本のせいだけにできないため日本のように複雑な道を歩んでいたとも思います。

 

また、殆どは各国の政治的なパフォーマンスであるとはわかってはいますが、「日本は反省していない」と言われると少し複雑になります。やはり僕は日本人なので完全に否定できない所があるからです。東京大空襲にしても原爆にしても日本人なので被害者だと思ってしまいますし、これがアメリカの論理で日本が戦争を長引かせたからだとしても、あの戦局にしたのは大本営の誰なのかもわかりません。

 

そういった苦悩の中で戦った先人達を知っているため、被害者の面と加害者の面と割り切れない日本人の苦悩もわかって欲しいなと思う時があります。戦略はどうだったとか、なぜこういう戦いになったか、なぜ負けたかなど冷静に検証する記事や番組が多かったら僕の意識も変わっていたかもしれませんが…

 

ただ、一つ言えるのは日本人が平和の道を積極的に歩んだのは間違いないと思います。おかげで、僕は日本人として堂々とどんな国でも渡り歩けますし、僕は歴史と向き合ってきたため外国人とこのテーマになっても今を生きる日本人の一人として全く引け目は感じません。

 

RYOJI